循環器:疫学調査と介入試験1

高血圧症が治療しなければならない病気であることはご存じのことと思います，では，その理由は何でしょうか？以下の３つから選んで下さい．

血圧が高いから (正常ではないから) 下げる
血圧が高いと病気になりやすいから下げる
血圧が高いと病気になりやすく，かつ血圧を下げると病気になる頻度が減少することが証明されているから下げる

上記のような解答例がない場合は2つめの [血圧が高いと病気になりやすいから下げる] と考える人が多いと思いますが，正解は3です．

血圧が高いと脳血管障害や心血管障害の頻度が高いことが，1950年代以降の健康診断などから明らかになりました．この結果から，血圧を下げればこれらの病気になる頻度が減少するのではないかと予想されました (第一段階) ．しかし，現在の高血圧症の治療は，このことのみを根拠にしているのではありません．この予想が正しいか否かを確認するために，第二段階として，多数の高血圧症の患者さんに降圧薬 (血圧を下げる薬) を数年間使用する試験が1960年代以降に行われました．その結果，当初の予想 (血圧を下げると病気になる頻度が減少する) が正しいことが分かり，これを根拠として高血圧症に対する治療が普及しています．

専門用語では上記の第一段階を[疫学調査] ，第二段階を[介入試験]といいます．

高血圧症は症状がないにも関わらず治療が必要な疾患の代表です．高脂血症や糖尿病なども同じく症状が現れにくい疾患ですが，上記と同じような過程を経て治療指針が決められています．

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